“ 『監督失格』という少々変わった映画の試写にも、
 昨夜行ってきました。
 音楽を担当した矢野顕子さんのご案内でした。
 ぼくの列の隣りが松尾スズキさんだったり、
 反対側の隣り方向には三谷幸喜さんがいたり、
 すぐ後ろには、満島ひかりさんがいたりで、
 ずいぶん注目されている映画だったようです”

JR九州「祝! 九州縦断ウェーブ」(テレビCM)
○AD/正親篤○演出/田中嗣久○企画/東畑幸多

NTTドコモ「ひとりと、ひとつ」(テレビCM)
○企画/多田琢○企画/麻生哲朗○CD/岡康道

Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)「TRAINING TRACE」(ポスター)
○AD/小杉幸一

長嶋りかこ、俵藤ひでと「mizukagami」(グラフィックデザイン、環境空間)
○AD/長嶋りかこ

Rocca SPIELE「Rocca SPIELE」(ゲーム設計、グラフィックデザイン)
○AD/柿木原政広○ゲームデザイナー/トゥルーリ・オカモチェク

バカラパシフィック「バカラ2010-2011プロモーション」(新聞広告)
○AD/木村耕平

国立国際美術館「風穴」(ブック&エディトリアル)
○AD/立花文穂

村田製作所「企業広告」(ポスター、雑誌広告)
○AD/白井陽平

全日本空輸「風は世界へ。ANA」(ポスター)
○AD/加藤建吾○撮影/数井啓介

東京女子プロジェクト(運営=POOL)「SHAKE BEAR」(プロダクトデザイン)
○AD/後智仁

今回、審査委員長を務めたアートディレクターの副田高行氏は席上で、
「個人としてもアートディレクターとしても、これから何をすべきか、何ができるかを考えていた期間だった。応募作品全9587点のほとんどは震災前に作ら れたもので、そうした中からグランプリを選ぶのは、多少ジレンマを感じる面もあった。『歌のリレー』シリーズは今年を表す広告として、ふさわしかったので はないか」と震災後間もなく開かれた5月の審査会を振り返った。

グランプリを競ったのはJR九州のテレビCM「祝!九州縦断ウェーブ」。

左:2011年度ADC賞の審査員長を務めた副田高行氏
右:グランプリ、ADC会員賞を受賞した佐々木宏氏は、ADC年鑑のアートディレクターも務める

審査員を務めたアートディレクターの葛西薫氏は、同賞決定について「サントリーとJR九州の両作品は対照的で、悲しみによりそうものと、元気をみん なで分け合おうとするもの。今年を代表する作品としてどちらに投票すべきか、審査員はみな迷ったのではないか。そのなかで、震災直後の行動力とチャレンジ する姿勢、出演者らの気迫を見て、(『歌のリレー』に票を投じた)という審査員が多かったのでは」と話す。

そして最後に、やや手法論にもなりますが、コラボレーションによるクリエイティビティの発揮、いわば「コ・クリエイティブ発想」への期待があるでしょう。
インテグレーテッド部門とアウトドア部門でダブルグランプリとなったラッパー「Jay-Z」の自叙伝発売キャンペーンは、マイクロソフトとのコラボレー ション。サイバー部門でグランプリの「The Wilderness Downtown」というミュージックビデオも、Googleとのコラボレーションでした。

ソーシャルメディアによって、いろんな価値観でつながった人々(セミナーでは彼らをコ・世代と呼んでいました)に、そのソーシャルグラフを介してコ ミュニケーションを広げていくため、企業やブランド側も違うカテゴリー同士が手を取り合って新しいコンテンツを生み出そうという発想です。
違うカテゴリーとのコラボレーションによって、違うソーシャルグラフに属するユーザーとつながることができ、またアイデアジャンプによる斬新なコンテンツも生まれる可能性が高いということでしょう。
このコ・クリエイティブ発想に掛ける期待というのも、今回のカンヌから強く感じられたものでした。

もうひとつは、その真逆とも言えますが、クリエイティビティを、単にアテンション獲得のためでなく、もっと企業活動の本質的なところで発揮していこうということでしょう。

例えば、メディア部門でグランプリを獲得した、韓国の「ホームプラス」というスーパーマーケットの施策がありました。
地下鉄に巨大なポスターを掲出したのですが、単に商品がずらっと並んでいるだけのビジュアルかと思いきや、そのひとつひとつにQRコードが付いています。 それを携帯電話で読み込むと、なんと自宅に商品が宅配されるというのです。つまり地下鉄構内に、広告どころかバーチャルショップを出店してしまったわけで す。これによってオンラインショップとしての売上が130%も増加したと言います。

こういった販促そのものや、クラウドソーシングによる商品開発、ユーザーを巻き込んだ経営判断など、企業活動に直接寄与するクリエイティブを評価する傾向が強く見られました。

また、今年から「クリエイティブ・エフェクティブネス」というクリエイティブの実際の効果を評価する部門賞が新設されたことにも、こういった本質論に対するカンヌの姿勢を感じました。
但し、セミナーにおいて「今やクリエイティブの評価はROIでは測れない」と発言するエージェンシーもあり、早くもこの賞に対する牽制が行われていたことも確かです。

まずひとつは、「コンテンツ」としての価値創造。そして、そのクオリティがますます重要になるということでしょう。
昨年あれだけカンヌを賑わしたソーシャルメディアは、もう当たり前に浸透していて、わざわざ口に出すことが野暮であるという空気さえありました。

そんな中、共感できる強いコンテンツがあれば、マスメディアだろうがソーシャルメディアだろうが、いかなる伝送路を経由しても必ず世の中に届き、人々とつながることができるという主張がありました。いわば、「コンテンツ・イズ・キング」発想の復権です。

フィルム部門でグランプリを獲得したナイキの2010年FIFAワールドカップに向けたCM「WRITE THE FUTURE」も、その象徴でしょう。
監督は映画「バベル」などで有名なアレハンドロ・ゴンサレス・ イニャリトゥ。とにかく膨大な予算をかけられた圧倒的なスケールの映像ですが、そこには商品告知もつながる仕掛けもROIもクソもありません。マイケル・ ジャクソンのシュート・ムービーなどと同じ概念で、そういう意味で、もう広告という枠を完全に超えてしまっているわけです。

また、セミナーにおいて、ロバート・レッドフォードや、パティ・スミスなど、永きにわたって素晴らしいコンテンツを生み出し続けているカリスマをパネラーに迎えての講義が多く見られたことも、カンヌのコンテンツ復権に対する強い意思のように感じられました。

もうひとつ、「Planet(惑星=地球)」というワードもよく聞かれます。
「地球のために何ができるか」という意味合いですが、これもいわゆる単発の社会貢献キャンペーンの枠を超えつつあるようです。
WWF(世界保健機構)の取り組んだ森林伐採を抑制するための運動、パソコンからプリントアウトを出来なくするためのダウンロードソフトの拡散というシンプルなアイデアは、プロモ&アクティビティでゴールドを受賞しました。

またセミナーでは、今でもペプシコ社の「Pepsi Refresh Project」や、それと同じ精神である「SONY OPEN PLANET idea」などが取り上げられています。
「By the people for the Planet」。企業は、「生活者のために何をするか」ではなく、「生活者と一緒になって地球のために何ができるか」を考えていくステージに入っているようです。

今回のカンヌでよく耳にするのが、「human(ヒューマン)」というワードです。

レオ・バーネットのセミナーでは、「Brands, Speak with, not consumers, but human.(ブランドよ、消費者と話すのではなく、人間と話をせよ)」というメッセージがありました。
ソーシャルメディアをはじめとするテクノロジーの進化は、生活者を消費者という一塊として見るのではなく、一人一人が違った顔を持つ「人間」としての関係を築いていくことを可能にしました。

例えばレオ・バーネットは、米国キャノンのマーケティングを例に挙げていました。米国キャノンでは、カメラを売るという発想を止め、生活者一人一人のライフログ、つまり「人生の記録をサポートしていく」という発想を持ち込んだといいます。一人一人の想い出を預かり続けるパートナーとして、カメラとともにネットでのフォト・サーバー・サービスも提供しているのです。

もはや、いかなる業種、いかなる企業にとっても、「ヒューマン・ブランド」の構築は目標とするべきものといえるのでしょう。

これからのコミュニケーションは、ソーシャルメディアによって生活者とのつながりを構築し、その上でいかに彼らを巻き込み、体験させるかが課題になっています。

これは、数年前によく言われた「ブランド・エクスペリエンス」とは少し違う意味をもっています。単にブランドの世界観を体験してもらうということで はなく、企業活動本業のバリューチェーンに巻き込んで、一緒にブランドを構築していくということを指しているのです。もはや「experience」とい うよりは「involving」といったところでしょう。

例えば、ダイレクト部門でゴールドを受賞した「カムバック・フェロラマ」というキャンペーンがあります。フェロラマは、生産中止になっているミニ チュア模型の汽車です。メーカーは「ファンがレールをつなぎ合って汽車を走らせていき、20キロ先の目的地にゴールさせることができれば再生産する」と約 束。熱烈なフェロラマファンが一般人を巻き込みながら見事課題をクリアし再生産が決定したというものです。つまり、再生産という経営の重要判断をファンの 熱意に委ねたというものだったのです。

他にも、LEGOの「CUUSOO(空想)」というクラウドソーシング、つまり、ファンから商品開発のアイデアを募るものや、コロンビアでシボレー が設立したタクシーの運転手に働く意義を伝えるための大学など、企業活動の根幹に人々を巻き込んでいこうとするものが多く見られます。

“高崎氏は、電通 田井中邦彦氏の言葉「なんかええなと思った。あとでふり返るとそれは広告だった。それでええねん」を紹介。広告界の中だけで評価しあうことに疑問を投げかけ、「広告は映画や音楽や小説と同じ土壌にある。その中で選ばれたものだけが、メディアや時間を超えて伝わっていく」と語った。「メディアの使い方が珍しいものが広告の未来なのではない。コンテンツの価値をどう作るかにこそ力を注ぐべき。広告がつまらなくなると、広告自体がやせていってしまう」と警鐘を鳴らし、いかに自走していくコンテンツを作るかが今の自分の課題であり、これからのクリエイターに必要なことだと締めくくった。”